富士山噴火に備える

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 この章では富士山噴火に伴う関連情報などをお知らせしたい。

■富士山噴火

 富士山は人間でいえば青年期の火山であるといわれている。西暦700年~1100年の間には、古文書などで10回程度噴火したことがわかる。
 その後、1511年、1560年、1700年と噴火し、1707年には宝永大噴火が起こるが、その後300年間は休止状態であり分類上は「休火山」となっている。ただし、死火山ではないので、きっかけがあればまた必ず噴火する。
 最後に噴火した宝永大噴火を元に考えると、相模原でも噴火に対する備えが必要な事がわかる。

■宝永大噴火

 一番新しい宝永大噴火は、大地震がキッカケになった。
 1703年12月31日(新暦)に、マグニチュード7.9~8.2と推定される元禄大地震が発生。三浦半島と房総半島の一部は隆起。小田原で震度7と推定され、小田原城下の被害がもっとも多く、小田原城天守閣も倒壊・炎上。熱海では約7mの津波が発生し、500戸あった住宅は残ったのが10戸程度になったと言う。地震による死者5200人(推定)。
 1707年10月28日(新暦)には、日本最大の地震と言われる宝永大地震が発生。マグニチュードは推定8.4~8.6、死者2800~20000人。関東から九州に津波。伊豆下田では5~7mの津波が襲来し、912戸のうち857戸が流失。紀伊半島東岸では推定5~10m、紀伊半島西岸でも推定4~6m。徳島・高知沿岸でも5~8mの津波と津波の被害が甚大であった。
 大地震の後の数年内には、また大地震が来ると言うケースが多い。日本に限らず、世界各地でもそうである。
 宝永大地震の余震が続く中、1707年12月16日朝10時頃、富士山が噴火を始める。これが宝永大噴火である。噴火の3~4日前からは有感地震が頻繁に発生し、有感地震の回数は噴火前日の午後から急増した。
 江戸でも約4日間火山灰が降り、約4cm積もった模様。海老名・横浜約16cm。相模原市域は3~16cmで、風の影響が幸いしたのであろう、相模湖など北部になるほど少ないが、相模大野など南部になればなるほど、火山灰の積灰量は多くなった。
 御殿場では1m以上火山灰が積もり壊滅。(火山灰の降灰分布図)噴火そのものは約2週間で終焉したが、御殿場付近が完全に復興したのは78年後であった。
 なお、1707年の宝永大地震は関東から九州まで被害が出ていることから、東海・東南海・南海の3つの地震がほぼ当時に発生したと考えられる。その後1852年には安政東海地震(M8.4推定)が発生、その32時間後に安政南海地震(M8.4推定)と連続して発生。約150年周期で大地震が発生している。次に起こる地震=1852年の150年後を計算すると、いつ発生してもおかしくない。
 →富士山噴火に関するエピソードは「江戸時代の相模原」でもご紹介している。

■今、宝永大噴火が起こると相模原はどうなるのか?

 幸いなことに富士山周辺の自治体が一番心配しているような溶岩や噴石においては、相模原では心配はなく、溶岩流出による青木ヶ原樹海のような心配はないので、直接生命を脅かされる可能性は少ない。
 ただし、富士山の東側は、地球の気流の関係で火山灰が降灰する。火山灰で太陽が見えず、昼間でも夜のようになる。宝永大噴火の際には、断続的な時もあったが江戸でも4日間火山灰が降り続いた。
 宝永大噴火のとき相模原市域では1cm~16cm程度の降灰。北部になればなるほど降灰は少ないが、富士山に近ければ近いほど多く降灰する。
 現在のハザードマップでは宝永大噴火と同規模の場合、相模原の降灰は10cm程度(10cm~29cmの範囲)と予測されている。
 また「停電」が予測される。火山灰は大変細かい灰の為、電気をショート・漏電させるなど家電製品や変電所・発電所などは弱いと推測される。桜島の事例では火山灰1cm程度で停電が発生している。東京・神奈川を中心に南関東一帯でも大規模な停電が発生する可能性がある。停電になれば、電車も動かない。NHKも放送ができない。非常電源で放送ができても、火山灰で電波障害が発生し、衛星放送は当然送信・受信できない。携帯電話も使えない。銀行ATMも使えずお金もおろせない。電気を使うガス湯沸器(お風呂)も使えない。漏電すれば火災が発生することもある。これらの影響は局地的な大地震の時よりも広範囲に渡る。
 水道も施設に異常がなく、電気が来ていても降灰の程度によって汚濁した水の浄化能力を超え、給水量が減少=場所によっては水道が使えない = 水が飲めない可能性がある。それも、数日で済めば良いが何週間と続く可能性が高い。
 なんと言っても、火山灰が2cm以上になると、目・鼻・喉・気管支系の健康被害が起こる。実際、宝永大噴火の時の江戸庶民も、また有珠山噴火で2cm以上の地域では健康を害している。
 要するに、公害問題となっているpm2.5のように、灰には非常に細かいガラス成分があるので、そのガラスで目の角膜が損傷し失明に繋がる恐れがあり、喉や肺もやられてぜんそくや呼吸困難で、死亡者も出るのだ。
 また、降灰1cmで農作物の半分が収穫不能、2cm以上で農作物は1年間収穫できなくなる。稲作に至っては0.05cmで収穫不能。
 道路は降灰すると見通しが悪くなり、スピードを出せない=渋滞になる。5cmの火山灰で100%通行不能ととされるが、5cmまで行かなくても数cmで東京・横浜・厚木方面の道路は渋滞が発生し通行が困難になると考えられる。
 当然、東名高速なども通行止となるまで、生活物資の流通が困難となり、食べ物・日用雑貨などがスーパーから消える。
 なお、特筆すべきは有珠山の事例で、僅か0.5mmでも通行できなかった道路がある。火山灰が積もっているところに雨が降ると、道路がツルツルに滑り、走行ができなくなるそうだ。ただ、道路に関しては、降灰がなくなってから頑張れば4日で灰を取り除き復旧する見通し。道路が復旧すれば、支援・その他復旧も始まる。

 この話は、宝永大噴火と同規模の際の話であり、当然これより規模が小さい噴火も考えら、逆にもっと規模が大きな場合も考えられるので、あくまでも目安として参考にして頂きたい。

■我々が出来る対策

 富士山の火山灰に対する策は、何百年に1度、また規模も予測がつかないと言うこともあり、国や相模原市でも大地震の想定・対策までは準備は取られていない。その為、地震用の対策がそのまま使われると考えられる。
 しかしながら、宝永大噴火のように数日に渡り火山灰が降ると、一瞬の大地震と違い、数日間の間復興作業を開始することもできず、その間市民はどう耐えて生活するのか、予測も困難で不安材料は多い。
 火山灰がやむまで相模原の自宅内から一歩も外に出ず、じっとしている方法が一番安全かも知れないが、もし、宝永大噴火の時のように4日間も火山灰が降ったら、毎日暗い中、食料・飲料の確保がどうなるのか予測がつかない。冬なら暖房(燃料)も必要だ。
 市外に外出や勤務していた場合、相模原の自宅に帰りたくても、帰れないことが予測できる。地震と違い、災害が数日間続くから、動きようがなく帰宅難民は本当に帰宅できない難民となってしまう。そのような時は、外出先最寄の学校に避難するしかない。

 それらを考えると、幸い地震と違って火山灰が降り注ぐ前、電気がまだ使える間の数時間は非難する時間がある為、最初は例え小規模な噴火であっても、その後長く続く事も考えられるし、テントを持って、八王子→あきる野と、電気がある地に非難するだけでも食料調達など、一時しのぎになるのかも知れない。ただ、道路は使えたとしても大渋滞が予測され、電車は停電になれば動かなくなる。残された時間を有効に使えるかどうかがカギなようだ。いざと言うとき時間を有効に使う為にも、事前の準備はある程度必要だ。

 それらを考えると、基本的には地震に備えるのと同じく
 1.食料の備蓄(3日間分以上)
 2.飲料の備蓄(3日間分以上)
 3.長期間の停電に対する対策(乾電池・電池の電灯など)
 4.健康被害対策(メガネや目薬、うがい薬、目を守るゴーグル、灰を吸い込まない防塵マスクを何枚も備蓄など)
 など最低限必要かと思われる。防塵マスクは工事現場用のものであれば安く手に入る。

 自動車には同じく
 1.ある程度の食料・飲料の備蓄
 2.ケガした際の救急
 3.テント・防寒具などをトランクに入れておく
 4.日ごろよりできるだけ、ガソリンを満タンにしておく。
 などの対策を講じておくとより安心できる。

 最後に・・。大地震が発生すると数年内に大地震が発生し、場合によっては地震により富士山噴火が誘発されると言うことを忘れずに、今できる対策を講じて欲しい。